日々、これ口実

自分の感じたこと、思ったこと、ただの雑記

九州へ端を求めて走りに行く

旅に出る理由が100個くらいあるとは云えないが、ひとつ理由を聞かれたら「端っこ」と答えている。

自分の記憶の特性が映像が主になっていて、それを文字に起こすのは少々骨が折れる。書いている自分を映像で動かしリズムに乗ってる間に進めていこうと思う。

九州に行こうと思う

人生でいろいろあって少し時間がとれたのでこの時期にバイクで行くなら九州。行くなら端っこまで。そうすると佐多岬しか思い浮かばなかった。

アニメ「スーパーカブ」最終回で佐多岬まで行ったことにそれなりの影響を受けて下道をぼちぼちとキャンプでもしながら目指すことも考えたのだけど、所々の事情で体力が問題になりそうなのでやめておいた。

そうなったら選択肢はそう多くなく、関西からフェリーで門司、大分、宮崎、鹿児島まで一晩。帰りくらいは走って帰ってくればいい。

しばらく逡巡した結果、帰りもフェリーに乗ることにして、その迷っている間に帰りのフェリーは予定していた次の日のチケットになった。

鹿児島県志布志港で降りて、福岡県の門司港から帰る。

4月26日に出発して5月1日に帰り着く。

九州へ

4月26日午後、大阪。

午前中にパッキングを終えて時間も余ったので早めにフェリー乗り場へ。15時到着。

受け付けは15時半からだったが、すでに並び始めていたので自分もその列に加わった。

鹿児島行きは旅行支援が使えるというアナウンスがあった。用件を満たしていたしワクチン接種証明もアプリで手元にあり流れの中で手続きを行った。

予算より結構安くなり、浮いたお金であとで船に乗り込んでからカプセルホテル状態から一人部屋に部屋のグレードをあげた。

手続きをやっている間にもう降らないと思っていた雨が少し降ってきたらしく、灰色の短髪、革ジャンと白いTシャツにデニム姿をしたハーレーダビッドソンの申し子のような壮年男性が「雨やわ。自分、ヘルメット持ってきてて正解や」と話しかけてくれた。

搭乗手続きを済ませてややしてからバイクの待機しているところへ向かうと、先ほどのハーレーの男性が、また別のハーレーの男性と話をしていた。その隣にバイクを停めていたので船旅前の偶然の会話メンバーに自分も参加することになった。前述の男性はちゃきちゃきの大阪の男性、もう一人は横浜から来られていて自分より少し上の年齢に感じた。

旅の予定やおいしいもの情報を交換しつつ搭乗時間まで過ごしていた。

その間に集まったのバイクは概ね10台。世はまだ連休に入っていないながら、そこに向かう勢いを感じる程度の人数だった。

 

フェリーに乗り込み、部屋を移る手続きをしている間に出港していて、旅に出る感慨にふける時間ももたないまま船内に流れ続ける「さんふらわあの唄」に脳をやられていた。

夕食を軽く済ませるつもりでいたら唄にやられてバイキングを選んでしまっていた。

もりもり食べて風呂に入ったが、興奮もあってなかなか寝つけずに2時間程度の睡眠を2回する程度になってしまった。

朝は軽くあんパンとコーヒーで済ませ、デッキから都井岬を眺めてから荷物をまとめて下船が始まるのを待った。

再び乗船前の二人と会い、またとりとめのない話をしていると時間はあまり長く感じなかった。思っていた時間より30分以上遅い下船になるようで、桜島のフェリーに乗る予定をしていたという横浜のハーレー兄さんは少し焦っている様子だった。

上陸

バイクの並びの各々が黙々と鞄をシートに固定している。トラックが降りていく。ほぼ全員が待機状態になった頃ゴーサインが出された。

薄暗い船内から明るい外に駆け降りる。盛り上がる瞬間。盛り上げたい。

さんふらわあさんふらわあ〜たいようにまもられて〜」

頭の中では盛り上がられない曲が流れる。

消そうと思うから消えない。消そうと思わなくても消えない。

少しバイクを停めて、早速向かう目的地までのルートを確認。

一足先に降りたハーレーのおっちゃんが停車している横を手で会釈して、薄曇りの志布志を走り始めた。

長距離を走る前に少し燃料をつぎ足しておこうとガソリンスタンドを探していると横浜のハーレーお兄さんが給油を終えて走り出すところで、お互い手を振りあって旅の無事を祈った。

自分も給油をするために寄ったガソリンスタンドで店員のおじさんとどこから来てどこに行くのかという定型文みたいなやり取りをして旅が本格的に始まった。

佐多岬まで

少し時間が遅くなったことで盛りだくさんで考えていたいくつもの目的地を削り、おおまかな走行ルートを決めて走り始めた。

気温は初夏のまだ暑くない過ごしやすさを発揮していて、心配していた寒さは微塵もないツーリングに最適な気候。

少しずつ晴れていく空にやや興奮しながら448号線をひたすら海沿いに南下していた。まずはJAXA 内之浦宇宙空間観測所を目指す。

少し田舎道を走ると海沿いを駆け上がり走り抜けるうねった道。

走っている左側、東に見える海は果てしなく、空はいよいよ青くなってきていた。

サイドバックもシートバックも詰め込んで走るのは初めてだったので少し様子をみながら峠道を走り、内之浦海岸に至る頃には荷物を満載して走ってることが気にならなくなっていた。

海岸も海も輝いていて、その景色を目で捕らえて空気を感じることに必死だった。

内之浦海岸を抜けると、橋の欄干に人工衛星の形が乗っているのがわかった。それぞれの橋で違うモデルが乗っていて写真に収めるか少し迷った。道も楽しく何度も止まるのもためらったので、記憶に留めながら坂を駆け上がった。

宙の家という場所で止まり、置いてあった「はやぶさ」の模型はしっかり眺めて、ほどなく内之浦宇宙空間観測所前。

 

資料館を見学したかったが、時間がないのでアンテナなどをみながら「ここには来た」と自分に刻みつけて再び走り始めた。

県道74号に入るかそのまま448号経由して肝属グリーンロードにはいるかぼんやり考えていたら、岸良あたりで左折しないで進んでしまい危うく峠道に向かいそうになった。

そういうこともあって、海沿いの峠道で精神を削るよりも肝属グリーンロードも楽しく走ることに決めた。なにより安心安全が大事。

山の中を突っ切る448号をジェットコースターのように楽しんで、少しずつ人家が増え始め、そろそろ広域農道に入る…と考えていたらいつの間にか海沿いになっていた。

ナビはもちろん使っていたけれど、音声のみだとこういうことは個人的にはあるあるで、曲がるところを間違えてしまうとそのまま修正されて予定と違ったルートになる。

肝属グリーンロードをしらないまま、根占の海沿い。

海の向こうに定冠詞のつくような山が見えつづけ、あれが桜島ではないだろうが脳内には名前が浮かんでこない。記憶の片隅に引っかかるものはあるけれど、無理に引っ張り出してくることはせず。

ずっとパトカーが前にいるので巡航速度が制限速度より少し遅い。むしろ志布志についてから運転しているのが高齢の方が多いためか制限速度をきっちり守っていることが多い。これはのちに大分に至るまでそんな印象があった。関西とは違う。

町の名前に佐田という文字が見え始め、いよいよ目的地が近くなってきた。

空はきれいに晴れていて、暑いか暑くないか程度。

峠道にはいる。海岸沿いにでる。海が蒼い。

再び登りになる。

碑が見えた。

到着。

佐多岬

見た覚えのある青いバイクが停まっていて、写真を撮っている人がいた。

写真を撮るのに邪魔のならない程度に避けてしばらく撮影が終わるのを待っていた。

撮り終わりこちらを見て「写真撮りますか?」と声をかけられバイクを移動させる。

「同じフェリーでしたよね」などと少し話をし、バイクと碑を写真に撮っていると

「撮りましょうか?」と。

これ以降の旅路では撮ることはなかった自分とバイクが写った記念写真を残すことができた。

 

観光案内所に進み最南端到達証明書を手に入れ、かじゅまる木を背中に海と空をしばらく眺めていた。

「展望台までいくと時間かかるし、結構しんどいよ。その後を考えたらあまりおすすめできないかも」と桜島に向かったハーレー兄さんに聞き、その話に頷きながらせっかく行くんだし見てから決めようと思っていた。

迷わず「無理はしないほうがいいな」とすぐに決めることができた。

まだこれから桜島を見て、九州東側をひたすら北上する予定なのだ。

一番の目的地は佐多岬だけど、なにより無事に帰り着くことが大事。

 

 

どこかに行くというよりどこかに行くという口実でその地を走りたい、ただそれだけ。この旅の道中で何度も思ったし、多分この先どこかにいくことがあっても多分同じことを思うだろう。

 

つづき

toku2.hateblo.jp