半島の東
前回
桜島のほう
佐多岬を出発したのは12時半ころ。
走り出したらあまり時間を気にしていない。食べるという気持ちもそう沸いてこない。
ただ、旅行支援のクーポンが2000円分ある。観光案内所では使えなかったのでこれを使いたい。
使えるお店を検索してざっとみても使いやすいのはやはり道の駅。
桜島と霧島に向かう予定を大幅に削るルートを考え、垂水市の道の駅を目指して走り始めた。
通ってきたルートを引き返し、西に鹿児島湾を見ながらひたすら北上する。
なんとなく室戸岬から西へ走ったときと似た雰囲気を感じた。街の感じも見た目もそんなに似ていないのに。
気持ちよく晴れてはいないけれど、直射日光を防ぐ程度の薄い雲が広がった空。
遠くに存在感にあふれた山が見え始めてもくもくと噴煙をあげている。
そこには大きな感慨もなく、そこに桜島があるという事実だけがあった。
概ねなんであってもそうなのだけど「そこにその事象がある」ということ以上の感覚がうまれてくることはあまりない。
「桜島を見た」という経験にある種すぐに満足してしまう。
霧島に行くルートを外したのはそのためだった。
山はある程度離れた場所から眺めるほうがいい。近づきすぎると見失ってしまう。
もう少し余裕のある計画を立てていれば霧島をみて、そこを走ることができていた。
また来れる日がくる。
そんなことを考えて走り、道の駅たるみず はまびらについた。
鹿児島とヨーグルッペ
一番気温が高くなる時間になっていた。夏の装備に切り替えたい気候。
各種物産が置いてある売り場を抜け、総菜を探す。
「鹿児島には薩摩揚げの自動販売機があるらしい」と乗船前に聞いた話を思い出したが自動販売機を探す時間はないので、すぐ食べれそうな袋入りの薩摩揚げとばくだんおにぎりを手に取る。
あと鹿児島といえばヨーグルッペ。
宮崎の会社らしいが鹿児島といえばパックのヨーグルッペなのだ。
ただ、ここは種子島じゃない。
場所は違っていても近くでロケットは発射されるし、遠野くんはまた同じので、澄田は今日はもう決める。
桜島を眺めながらお昼ご飯を食べる。お土産にゆるキャラ「たるたる」のご飯ダレを選んだ。残ったクーポンをアフォガートにして使いきる。
ライダーとわかる服装をした高齢の男性と壮年の男性が話しかけてきて少し話をした。聞くに高齢の方は82歳。矍鑠として全くその年齢にみえない。東京から来た息子と二人でツーリングをしているという。ハーレーに乗っていることを誇らしげに話していらした。
自分はいつまで乗っていられるだろうか。
都井岬へ
道の駅から少し北上し海潟緑地公園のあたりで停車。南東からみた桜島がよく見えた。
霧島市から志布志市経由で都井岬に行こうと思っていたが、いったん引き返して鹿屋市経由の方が早いとナビが騒ぐ。なんとか21時までには宿に着きたい。
鹿屋市を走っていると哨戒機「P-1」が空をぐるぐる飛んでいた。不思議な色をしている。
朝に見た景色を通り抜けて都井岬へ向かう峠道。
入り口で100円を支払い少し走ると山の上に馬が見えた。
早朝に船から眺めていた場所をバイクで走り見えない航路をみる。
灯台までついたが、すでに日は傾きかけていて入ることは叶わず。
昨年行った御前崎灯台も出雲日御碕灯台も入ることができず、今回の都井岬灯台もタイムアウト。やっぱりとうだいは狭き門なのですね。
宮崎名物南国プリン
予定していた堀切峠は東九州自動車道E78へ変化。宮崎市内へとひた走る。
平日の夕方ということもあり交通量も多くなっていた。
街が一気に大きくなり始めて宮崎市の規模に驚き、大学のころの友人やこれから会うフォロワーに申し訳ない気持ちになってきていた。鳥取市くらいを想像していた。
大学のころに宮崎市出身のHくんという友人がいた。あいうえお順で学籍番号が一つ前。入学式後のオリエンテーションで席が前後の関係で話すようになり、宮崎の方言で強調に使う「てげ」という単語を教えてくれたのがとても印象に残っていた。
以降、宮崎といえば「てげ」
日もすっかり落ちた繁華街の一角に南国プリンはあった。
店のすぐ前にバイクを停めて、カウンターの向こうに懐かしい顔をみた。
14年とか15年とか多分それくらいのつき合いになる。インターネットの友人としてはそれなりに長い。彼が宮崎に戻ってから10年近く会ってなかったはず。
事前に連絡はしていたので話は早かった。ただお互い久しぶりすぎてどんな話し方をすればいいかわからず。ともかく家に帰り着いてから食べるプリンとこれから食べるプリンをお願いした。
看板商品のスカイブルーのゼリーが入った「南国プリン」より「テゲセボン」という名前の印象が強い。
"Tege C’est bon"
とてもいい名前だ。だが食べたのは季節限定の生いちごプリン。
とてもおいしいやつは帰り着いてから食べる。今は何でもおいしい。
店の二階でおいしくいただき、とても短い再会を惜しむ。
繁華街のど真ん中にバイクを停めたため、街ゆく人がナンシーさんになる。
おじさんも若い人も、海外からいらしてるだろう英語圏の人も。
- ナンシーA「これはなんcc?」とく「400ですね」ナA「おっきいね」
- ナンシーB「これはジクサーの大きいやつ?」とく「ジクサーではないですねー」
- ナンシー外国人「これはなんだ?(英語)」ナンシー外国人友人日本人「これはグラディウスだ(英語)」ナ外「メーカーはどこだ(En)」ナ外友「スズキ(エンブレムを指さしながら)」とく「(なんでこの人このマイナー車を知ってる?というか自分が答えるんかい)」
宿の夜と朝
盛りだくさんにしていた予定が終わった。あとは日向市の細島というところまで走るだけ。日はすっかり落ちている。
昼間なら多分とても気持ちいい道だろう。線路沿いで向こうは海のはず。
ただ暗い。疲れに合わせて真っ暗な道を走るのはとても神経を使う。
再び10号線。コンビニでおにぎりとからあげ君を買い細島方面へ。
漁港にたどり着いて宿を探すがよくわからない。とりあえず灯台があるから行ってみる。
真っ暗の先に灯台があり遥か向こうに光を飛ばしているのをみた。
引き返して地図を見ながらなんとか到着。
予約したときからわかっていたが独特の雰囲気を持ったいわゆる民泊。
いまは一晩休めればいい。
簡単な説明を受け、荷物を整理して腹ごしらえをしてすぐにシャワーを浴びる。
すぐにベッドに横になってみたがさっきまで張りつめていたものが全く解けず。
疲れているのに頭がキンキンに冴えている。夜が明けてすぐに出発するつもりが全く寝つける様子がない。
何故か枕があたったところが痒い。部屋に充満した独特のにおい。謎のかゆみが起こる枕を端にやり、水に濡らしたタオルで冷やしながら浅い眠りへ。
2時間も寝てないうちに蚊に刺され、その羽音で寝つけなくなる。
うとうとしながらとにかく体だけは休める。
一日が終わったような終わってないような感じのまま朝を迎えた。
まずは前日の走行で緩んだネジを締めるため六角棒レンチを買いに行かねばならない。幸い九州には24時間営業のホームセンター(?)トライアルがあるのを覚えていた。
とても便利なお店らしい。
1日目走行距離およそ450km。